横浜美術館のトライアローグ展を鑑賞した

夫が『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という本を読んでから美術館に行きたがっており、テレビ東京の「新美の巨人たち」という番組で特集していたルネ・マグリットの『王様の美術館』という作品があるということで、横浜美術館で開催されている「トライアローグ」という特別展示を見に行ったので感想を書く。
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トライアローグというのは三者会談という意味で、同時期に建てられた横浜美術館愛知県美術館富山県美術館の20世紀の西洋美術作品を集めた展示だった。

正直現代美術はわけのわからんものだと思っていて、行くまでは楽しめるか心配だった。
しかし、行ってみると大変構成がよく、とても楽しめた。

展示されている作品の製作年によって、1930年頃までの30年、1960年頃までの30年、それ以降、と3つのセクションに分けられており、20世紀前半には平面の絵画(2D・二次元)で表現されていた美術作品が現代に近づくにつれて、絵画という枠を飛び出し、既成のモノを使った立体的な(3D・三次元)作品や、写真・印刷物を使った作品などに変化していく様子がわかった。

また、絵画については使われた技法についても解説があることが多かった。サイトには展示された作品に使われた技法の動画もある。
美術館には完成した作品が飾ってあるけれども、現代芸術作品の鑑賞は「完成された作品は何を意味しているのか? 作者は何を訴えているのか?」といったことを考えるだけでは済まないのではないかということを感じた。
作品を制作している時点から芸術は始まっていて、その作品を作るにあたって使う技法を選ぶところや、例えばライブドローイングであれば観客がいるところで絵を書く際の製作者の感情や絵筆から滴る絵の具の感触、そしてそれを見ている観客の感情だって、完成された作品につながる芸術性ではないかと思った。
美術館にはその流れの結果としての「作品」しか展示することはできないけれど、どのような経緯で描かれたかが解説してあることにより、製作中の芸術性を想像することができた。

この企画展に行くきっかけとなったルネ・マグリットの『王様の美術館』については、この絵画から想像した物語のコンテストが行われていた。

私もこの絵画については勝手な解釈を夫に語っていたのだけれど、展示されている入賞作品のパネルを見ると、見た人たちはそれぞれにいろいろな物語性を感じるのだなあと感心した。

コロナ対策のせいか音声ガイドの貸し出しはなかったけれど、スマホのブラウザで見れる鑑賞サポートアプリでピックアップ作品の注目点や解説を読めるようになっていて、それもとても良かったし、3美術館で共通する画家(芸術家)の作品がある場合は並べて展示し、作者の人生や作風の変遷を読むことができた。

結果的に、とても楽しめた。
一つ一つの作品を理解することは難しいけれど、わけのわからない現代芸術が多く並んだ展示会でもこれほど楽しめるんだと、なんとなく自信になった。

展示をひと通り見た後、ミュージアムショップを見て、何も買わずに一度は美術館を出たものの、夫と「あの作品のさぁ」と語ることが多すぎて、引き返して図録を買った。
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特別展の図録にしては珍しく、ISBNもあるハードカバーの立派な本だ。



夫は自分からこの企画展に行きたいと言ったにもかかわらず、美術館を出た直後は「よくわからなかった」としょんぼりしていたが、私と図録を見返して作品について語ることにより、楽しめたという気持ちになったようだ。(参照:夫のブログ記事 トライアローグ - clomie.dev

実は鑑賞した2月23日は結婚記念日だったのだけれど、こんなに楽しく夫と語らう話題があり、教養を深めることができたので、とても良い結婚記念日だった。